サンアントニオの日本庭園(アメリカ合衆国国家歴史登録財)で日系移民の痕跡に触れる。
2019年5月27日テキサス州サンアントニオにある日本庭園Japanese Tea Gardenに行ってきた記事です。
ネット上の口コミでは、芳しい評価ではないJapanese Tea Garden。しかし実は日本人とゆかりのある場所であり、とても美しい庭園でもあるのです。
確かに、日本人の我々からみると「日本庭園…?」と首をかしげたくなるような、何とも言えない違和感があるのも事実なのですが、アメリカに輸入された日本的な要素として、または20世紀当時のモノの見方に思いをはせると面白いかもしれません。
また日本というカテゴリーを外してみても、みずみずしい緑がとても美しかったので、ぜひ写真と一緒にお届けしたいと思い記事にしました。サンアントニオ観光に来た旅行者の方にもオススメです。
Contents
サンアントニオの日本庭園 Japanese Tea Garden(アメリカ合衆国国家歴史登録財)とは
テキサス州サンアントニオにあり、日本でいうところのたぶん重要文化財的な?「アメリカ合衆国国家歴史登録財」に登録されている日本庭園がJapanese Tea Gardenです。
元々は19世紀中頃にドイツ系移民によって開拓された採石場で、ライムストーンなどを用いてコンクリートなども作っていたようです。サンアントニオの主要な建物はここの石材やコンクリートを用いています。アラモ砦近くのMenger Hotel(写真上)もこの石材を使っているとのことです※1。
東洋的な公園の整備計画が持ち上がるのは1917年。石材の配置や遊歩道の整備など、実際の建設作業は受刑者によって行われました※2。
ちなみにWikipediaによると、サンアントニオの日本庭園以外にも、ハワイとパサデナの日本庭園がアメリカ合衆国国家歴史登録財に登録されているようですね。アメリカ全土でも3つしかないとすると、サンアントニオに来たら行ってみる価値ありでしょう。
日系移民, Eizo Kimi Jingu
サンアントニオの日本庭園Japanese Tea Garden は、日本とゆかりの深い場所でもあります。
かつて、Japanese Tea Garden のデザインを補助し、住み込みで公園の管理を任されたEizo Kimi Jinguという名の芸術家がいたのです。
1881年日本に生まれたJingu氏は、1900年代初頭にアメリカへ移民としてわたりました。妻であるMiyoshi夫人とはカリフォルニアで出会ったようです。水彩画家であったJungu氏は、日本語はもちろん、英語もスペイン語も堪能でした※3。
第一次世界大戦にもアメリカ兵として従軍し、1919年にはサンアントニオ市からの招待を受け、公園内に住み込みの管理者として同市に移住しました。1926年にはBamboo Roomが開店し、軽食とお茶を楽しむことができたようです※4。
しかし、Jungu氏とその家族を取り巻く状況は、日本の真珠湾攻撃により一変します。Jingu氏は1938年没し、その後家族は第二次世界大戦の真珠湾攻撃以降アメリカで強くなった反日本人感情の標的となりました。
サンアントニオの日本庭園(Japanese Tea Garden)のみどころ
真珠湾攻撃による反・日本人感情の影響で、Japanese Tea Gardenは第二次世界大戦中”Chinese Tea Garden’’と名前を変えていたことがあります※。この痕跡は庭園入口の門に残っています。
中国系アメリカ人のTed Wu, Ester Wu(夫妻?家族?)によって、1960年頃までパゴダ内でスナック・バーが開かれていました※5。
入口を見てみると、しっかりとChines Tea Gardenと書いてありますね。名称の変更に関する歴史的な事実も痕跡が残っているところに好感が持てます。
お寺の門のようにも、または鳥居のようにも見える入口は、メキシコ人芸術家で建築家のDonicio Rodoriguezによって日本の鳥居を模して造られた入口です。力強い木のように見える構造はすべてコンクリートでできており、Rodoriguez独特の様式とされています※6。
流木のようなごつごつした感じがリアルですね。
個人的には鳥居というより、お寺の山門っぽいと思うのですが、こういう形態の鳥居が日本にあるのでしょうか?日本人の視点から見ると、ぐっと上にそりあがった屋根の部分などに不思議さを感じると思うのですが…。
当時のアメリカやメキシコにおけるジャポニズム、日本的なものやアジア的なもの受容や解釈を考える例としては、もしかしたら面白いのかも?
入口から進んでいくと、開けた場所に石を積んだ東屋のようなものが立っています。パゴダ(Japanese Pagoda)と呼ばれている建物です。
パゴダとは仏舎利塔なので、宗教的な意味だけに限定するなら雑に言うとブッダの骨やお経などを入れるお墓のような霊廟のような建物ですが、欧米でみられるジャポニズムとかオリエンタリズムの庭園では宗教的な意味とはちょっと別の方向で使われているのかも?
Japanese Pagodaは風通しがとてもよく、大きな屋根のおかげで日陰になってて気持ちがいいです。
眺めもよく、パゴダから滝の方向の眺めがとても絵画的で美しいです。この庭園を計画したRay Lambert氏、マジで最高です。
近くに売店があるので、パゴダから景色を眺めながら、お茶やアイスキャンディーで休憩するのもおすすめです。
Japanese Tea Gardenは、すべてが全くの日本人になじみのある日本庭園なのかというと、日本人の視点からはちょっと違って見えるかもしれません。
でも、丸く刈り込まれた木々や、池にかかる橋や、小道や緑の木々をみると、私は日本を思い出しました。
池には鯉が泳いでいて、もちろん金が投げ入れられていたり…
滝が落ちていたり…小さな竹林(笹?)があったり…。
そしてとにかく、綺麗なのです。どこでシャッターを切っても絵になる美しさ。
南国な雰囲気の植物の形も、なんとも言えないエキゾチックな雰囲気を醸し出していて、いい。
この時期(5月~6月)のアメリカは卒業シーズンなので、庭園内には多くの卒業生が記念写真を撮っていました。皆さんかなり本格的な機材でロケしてたことからも、この庭園が撮影スポットだということが分かります。
サンアントニオの日本庭園へのアクセス・料金・食事情報
住所は
200-414 Alpine, San Antonio, TX 78212
★周辺には駐車場もあるので車でも大丈夫です。
★バスも通っています。ダウンタウンからは11番に乗りましょう。
★庭園内は、滝付近から竹林あたりなど、一部階段があるので、ヒールのある靴はつらいかも。
また道が狭い箇所があるので、車いすやベビーカーも一部通りづらいかもです。
★入場料は無料です!
★庭園内にはJingu Houseという軽食屋があり、日本食っぽいお弁当を売ってます。他に飲み物や甘いもの、アイスキャンディなどがあります。
公式サイト(サンアントニオ市)はこちら。
おわり-サンアントニオ観光に日本庭園はかなりオススメ!
サンアントニオの日本庭園Japanese tea Garden、いかがでしたでしょうか。
私としては、日系移民の足跡をたどる意味でも興味深かったですし、世界大戦や真珠湾攻撃に左右された人々の存在を現実的にとらえることができたのも貴重でした。
そして何よりも、お庭が美しいですね!きれいな景色の中をゆったり歩くのも気持ちがいいです。
個人的にはかなりおすすめです。
参考URL(2019年5月26日参照)
※1, 2, 5 庭園内のキャプションから。
※3 https://tclf.org/eizo-kimi-jingu
※6 https://en.wikipedia.org/wiki/Dionicio_Rodriguez
その他に
https://en.wikipedia.org/wiki/San_Antonio_Japanese_Tea_Garden
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