外国で差別にあった人へ, 白人至上主義者の義理の家族と1か月住んで戦ったフランスでの実体験

外国で差別にあった人へ, 白人至上主義者の義理の家族と1か月住んで戦ったフランスでの実体験

2020年12月6日 0 投稿者: goldeneuglena

実は最近まで白人至上主義者の家に住んでいました。義母の夫にあたる人が白人至上主義者で、さらに義母も間接的に人種差別を認めている立場でした。義理とはいえ家族がそのような人であったことが私はショックでしたし、夫は自分の実の母親がそのような容認しがたい価値観であるのを目の当たりにしたので、私とは別の苦しさがあったようです。

今現在は義母とその夫の家を離れて生活しているので、夫婦ともに心身の安全は確保できている状況です。また幸いにも話を聞いてくれる家族や友人がいたので頭の中を整理することができました。人に恵まれていたと思います。

今回は私と同じように、不幸にも人種差別主義者や白人至上主義者と遭遇してしまい、不当な扱いを受けてしまった人への記事です。

差別やハラスメントというのは、被害を受けた本人ですら「これは差別/ハラスメントである」と即座に認識できず、ともすれば「自分も悪かったのではないか?」「もっと寛容になるべきだったのではないか?」「気にしすぎなのではないか?」というような、自責の念を抱いてしまいがちです。

大切なのは、まず読者であるあなたが「自分が受けた扱いは不当であるので怒りも悲しみも当然である」と正しく認識することです。そしてこの記事で私が遭遇した事例を挙げることによって、この認識をお手伝いできるのではないかと思い記事にしました。

この記事で少しでも自分の置かれている状況を客観視する手助けになれば、またさらに「自分は孤独ではないんだな」「少し前を向いてみようかな」と思っていただけると、とても嬉しいです。




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フランスの義理の家族から受けた人種差別

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黄色いワイングラス事件

最初の事件はフランス到着後、割とすぐにおきました。ベネツィアン・グラスのような色のついたワイングラスでお酒を飲むぞ、という話だったのですが、1つだけ黄色いグラスがあったのです。

そこに1つだけ黄色いグラスがあったのは確かに偶然だったのです(これは確実です。義母は嘘を受けない人ですが事件とは別の文脈で「手前から取ったのよ~」と言ってましたし)。しかしそれを義母の夫は「ミドリムシはこれ」と差し出しました。私はそれを拒否して、黄色い服を着ていた夫に渡しました。「ミドリムシのだと思ったのに」と言われました。これは黄色人種と呼ばれるアジア人の肌の色に基づく明らかな人種差別です。

悲しいかな、この時の私は瞬時に怒ることができずに、ただ動揺していたのです。まさか、義理の家族がこんなにも無礼で無作法であるだなんて。

「ジョークかもしれない」とも思うのですが、お互いに面白いと認識ができない冗談はそもそも冗談として成立しないので悪手です。そして私と義母の夫の間には、不愉快な冗談を受け入れて差し上げる義理も情も存在しないわけで、ひたすらに無礼でしかありません。良識ある人間ならこのような冗談は言うはずがないし、こういうきわどい冗談を言うなら関係性から判断して慎重に言うはずです。

またこれは発言者本人がジョークで言ったとしても、内容は人種差別です。もし似たような発言をあなたが受けたなら、それは抗議してもよい内容です。相手が発言の自由を権利として主張するなら、こちらには拒否する自由だってあるのですから。




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カボチャのスープ事件

さらに2週間目に私は食事を用意してもらえない、という事件がありまして。

私はカボチャのアレルギーがあるので、その日の夕食のかぼちゃのスープは食べられないのですね。食べられないメニューであっても別に用意されていたんです、前日までは。でもカボチャのスープ事件当日は代わりのものが何もなく、義母の旦那さんに睨まれながら「今日は食べ物はない」と言われてしまい…。

別メニュー作るのって面倒なので、それなら事前に教えてくれたらよかったんですけど、そういうのもなし

義母さんも一緒になって賛同してましたねぇ。夫は真っ青な顔で硬直してました。夫としては自分の家族がひどいことをする人間だったことに大変なショックを受けていたそうです。

まあでも、私もそれに従うような人間ではないですし、そもそも何で私の食事をお前が決めるよ、何の権利がおぬしにあるというのじゃ???って感じでしたので、自分たちの部屋にあったスナック菓子を持ってきて食卓で食べまることにしたんです。

そしたら義母の旦那さんが「ああそう、食べるのか」とか謎のプレッシャーかけながら言うんすよ。めんどくさい、ああ面倒くさい。でも私は優しいので「あ、お菓子一緒に食べます?」と返事しました。とてもやさしいので、哀れな差別主義者に一緒に分けてあげました。私のスナック菓子、食べてましたよ(笑)

色々終わった今思うと、多分義母の旦那さんは私に「従順なアジア人」のステレオタイプを押し付けたかったんだろうなぁ、と思います。私はそんなイメージ断固拒否しますけどwww

上の記事書いてる時にはわからなかったけど、「本来の自分」ではないのに、そうあるべきという相手の価値観を押し付けられるって、めちゃくちゃしんどいね




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従順なアジア人という理想を押し付けられた気がすること。

あからさまなものは上記の2件だけなのですが、言葉で明確に表現するのが難しいプレッシャーをずっと感じていました。私が感じていただけなので主観的で信頼性に欠けると思うのですが、一応記載します。

話を聞け、という眼圧。ずっと目が合う。

テーブルの位置も問題だったと思うんですけど私義母の旦那の真向かいだったんですよね。で、テーブルで会話が行われるたび、私は義母の旦那からずっと目を合わせられておりまして。上手に言えないんですけど、あの人の話を聞かなければならないプレッシャーを感じてました。しんどいので2週間目からはあえて目をそらして食事してたら、次第に収まりましたね。

アジアは我々とはことなる、と強い語気で言われる。

アジアは我々とはことなる、と強い口調でで言われたんですけど…。だからなんやねん?という感じですねぇ。

私と夫はそこまで異文化を感じないんですよ(多分思考が似てる)、むしろ今義母&その旦那との文化の差を感じているんですよ(これを世代間ギャップと言ってよいのか…)。それを人種や国の問題にすり替えないでほしい…。




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フランス版トランピスト??義理の家族は白人至上主義だった!

そんなこんなで割とあからさまな人種差別を受けていたんですけど、まぁなんとかうまいことやらんとなぁ、と思いつつ色々話すじゃないですか。

そしたらですね、アジア人の私に向かって「白人至上主義、良いじゃん」っていうんですよ~、もうこれはさすがに無理でしたね、いい訳ないじゃんwww 

しかもさらに気持ちの悪い矛盾がですね、義母の旦那さん、韓国からアジア系の養子を迎えてるんですよ。息子がアジア人なのに白人至上主義ってどいういうこと????おぬしが良しとする白人至上主義の中では息子さん被害者になっちゃうじゃん????意味がわからんね???もちろん私は「え、あんたの息子韓国からの養子やん、いいの?」って聞いたんですけどね、まぁまともな返答は返ってきませんね。もごもご言ってました。

しかも息子さん、小さい頃にグルノーブルでゴリゴリのアジア人差別にあってたんですよ。でも「慣れるだろ、大丈夫だろうと思った」とかおっしゃる。「慣れる」って、それってつまり、アジア人差別を受け入れろってことなんですけど、自分の父親からそんな言葉が返ってきたら私生きていけない。しんどすぎる。




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加えて反ムスリムでもあり…

しかも昨今の事情とニュースも深く影響してると思うんですけど、反ムスリムだったんですわ…。

私も夫も、友人知人にイスラム教徒が複数いるので、過激派も穏健派もひとくくりにして差別する反ムスリムには断固反対なのです。義母の旦那さんは知人に1人イスラム教徒がいるけど反ムスリムなんです。もちろんその人から特に実害を被ったわけでは無いのに、です。もう阿呆なんだと思う、ボケてるんだと思う。

テロ起こしたりする過激派ばかり報道されるけど、フランスには毎日生活する過激ではないムスリムの人々がいます。そういうの忘れないでほしい。




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しかも反知性主義…

こんな感じで、政治的なものへの姿勢が全く違うんですね、義母の旦那。

夫は正面からエビデンス込みで議論しようとしていたんですが、ところがどっこい、どうやら反知性主義っぽいんすわ。エビデンスのある他人の話なんぞ全く聞かんのですよね。自分の信じたい事しか見ない

夫も私も割と長く勉強している専門分野があるのですけど、その分野(政治関係ない)の話も否定から始まるの。しゅごい。




むしろトランプ信者やん?

書き出しながら私も夫もよく1か月も耐えたなぁ、と思うのですよ。で、落ち着いた今頃に思うんだけど、なぜあれはああなのか。

夫曰く、多分頂点に立ちたい系の男(homme α)になりたかったんだろうね、と。だから従順なアジア人を期待したし、夫はある分野の専門職だけど家庭内の別の雄だから、いくら正しくても一切聞かない。

到着後1週間で夫と2人で奇妙に思ったのは、「なんで義母さん、いつも旦那さんにいじめられてんの?」だった。特に食事の時に嫌味満載で、それ以外は大きな声で怒鳴られてたんだよね。もしかしたら「義母さんは自分(旦那さん)より下だから何言っても良い」とか思ってたんかな。しらんけど。

あと、不思議だったのは、義母の旦那さんの愛車がFordのピックアップ・トラックだったこと。

フランスの山道って意外と狭くて、軽自動車くらいの大きさの小型車でも2台はすれ違えないくらいの道幅のところもあるのね。しかもくねくねよく曲がるの。正直ピックアップだと不便で、実際のところ義母さんもそう認識してる。なのに旦那さんはFordのピックアップ。たぶん単純に好きなのもあるけど、ここまで色々あると勘ぐってしまう。力の誇示の象徴なんじゃね?って(笑) あ、あと気候変動は認識してるけど、人間のせいではないんだって(笑)

まるでトランプの信者みたいだなぁ、と思った。せっかく選挙前に事前に逃げてきたのに、到着した家にトランピストがいたなんて笑えない。

差別主義者ってなんでああいう感じなのか想像するんだけど、多分根本的に怖いんだよね。

今までは、差別主義者は人種や性別の差別に基づく優位さに意識的/無意識的に守られていたんだけど、人権や平等という差別を許さない姿勢を受け入れると、自分を今まで守ってくれていたものがなくなってしまい、自分の力が削がれる。つまり相対的に自分が弱くなる。それは怖いので受け入れられない。

ここで差別主義ではない人は「そんなハリボテの力なんて、どうでもよくね?」とおもんだけど、でも差別主義者は白人・男性という社会的差別によるハリボテ以外に何も力というか自信の源を持っていないんですね。例えば、大好きな趣味に関する知識や熱意とか、今まで成し遂げた仕事とか、そういう人種や性別に無関係の自分の根幹を持っていない。




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おわりに―差別にあったら戦ってほしいけど、無理そうなら一旦逃げてブログ書こう

今も「どうすればよかったのか」とグルグル考えてしまうんだけど、離れている家族ともできるだけ頻繁に政治の話を頻繁にした方が良いと思う。特に何年も離れていると変わったりするし、知らないうちに地雷を踏むのはダメージが大きいから。

あと確実なのは絶対に人種差別は認めるわけにはいかない、ってこと。文脈や意図は様々で、言い分はあるかもしれないけど、それでも基本的にだめ。本人ではどうしようもない属性を揶揄したり判断してはだめ。

だから、多分私が自分が受けた様々なものに怒っているのは正当な事だと思うし、夫が自分の親に絶望しているのも正しいことだと思う。

もしこれを読んでいるあなたも差別を受けてしんどい状況であるなら、一旦逃げるのも戦法のうちだよ。その場の環境が閉鎖的であればそれだけ早く外に出て、環境を変えよう。心と身体の安全を確保しよう。そのために逃げよう。

そして物理的に遠くに退避した後、ぜひ再び戦ってほしい。あなたの身の安全を確保できるなら相手に直接言うのでもありだけど、それ以外にもSNSやブログで世間に出来事を知らせるのも立派な反撃だと私は思う。あなたは戦う権利があるし、発言する権利がある。

家族の間だったりすると関係性も切れないし難しいし、ましてや道端で遭遇するヘイトに咄嗟に動ける人なんて少ないよね。私も本当にここ1週間ストレスでお腹が痛かった。

それでも遭遇した出来事は事実で、それはとても悲しいし腹立たしいし、気持ちが悪い出来事だった。こんなに傷つくことに対して私が黙認してしまったら、それは私自身にとっても、私と似たようなあなたにとっても可哀そうだ。私は今モノを言えるまでに回復してきたからいうんだけど、もしあなたも元気になったら一緒に戦ってほしい。

関連記事:フランスのサッカー選手によるアジア人差別関連で絶望してる話

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